地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

65歳以上が関東では436万人増加

 

30年後の医療を空想する

 最近話題になっている、大学医学部新設の動き。震災復興の「戦略」もあるのか、東北に設置を検討しているようです。

 個人的には新設されてもされなくても、どの地方に新設されても、さして関心はないのですが、いち早く東北に、と話が進んでいくことに、少し違和感をもちます。それは合理的な判断なのか―と。

 

 そもそも、違和感をもっているのは、将来の人口予測との兼ね合いからです。超高齢化社会とはいえ、地域差があるのではないだろうか。特に、医療現場レベルでは、高齢化率よりも高齢者数が問題になるのではなかろうか。(ベッドがない、などの状況はすでに発生していますので。)

 

 人口統計データを見ると、驚かされることがよくあります。それだけ自分の感覚と現実は離れているものだと思います。

 漠然とした印象だったので、公表されているデータを少しだけ調べてみることにしました。

 

  いったいどのような日本になっているのか、未来のことは誰にもわかりません。ここからは、しばし空想の世界にお付き合いください。

 

推計人口から考える

 人口統計といえば、こちら。今回はこちらのデータを参照させていただきました。 

将来推計人口・世帯数 | 国立社会保障・人口問題研究所 

 

 まずは、65歳以上の推計人口を都道府県別にまとめてみました。さらに、八地方区分別にも集計してみました。

 2040年には65歳以上が全国で3,867万人となっています。

f:id:cometlog:20131027155845p:plain

 

 例えば、青森県では2010年から2040年までに65歳以上の人口は3万人増加しますが、東京都では144万人増加する予測となっています。う~ん、恐るべし東京の将来。

 

 八地方区分別の推計人口のみを表とグラフにまとめてみました。

f:id:cometlog:20131027160508p:plain

f:id:cometlog:20131027160627p:plain

 

 東北も含め、いずれの地方でも65歳以上の人口は増加していますが、関東の増加数は際立っています

 

 予測増加数を表とグラフにしてみました。 

f:id:cometlog:20131027161234p:plain

f:id:cometlog:20131027161400p:plain

 

 2010年との比較で2040年までの30年間に、65歳以上の人口は東北で30万人増加が予測されていますが、関東では436万人増加が予測されています。

 

 仮に、関東の人がどんどん東北へ移住していく、という予測があればまだわかりません。また、高齢者が医療のお世話にならなくなる、というシナリオも可能性としてはあるでしょう。

 しかし、この65歳以上の推計人口から「空想」する限り、関東の医療事情は逼迫するのではないか、と不安になります。

 

65歳以上の人口比から医学部数を考える

 医療は高齢者だけが必要なわけではない、というのはもちろんですが、医療需要が大きいことには間違いないでしょう。あくまでも思考実験として、2040年の65歳以上の推計人口比で80の大学医学部数を決められるとしたら、どのような配分になるのでしょうか。

f:id:cometlog:20131027162436p:plain

 

 現状で地方の偏りがかなりあるように思えていましたが、案外、2010年時点での大学医学部数は、ある程度妥当な配分になっていたことがわかります。

 しかし、2040年には大きく配分が狂ってきています。中国、四国、九州・沖縄では過剰となり、関東(-3.4)、近畿(-1.2)、北海道(-0.5)の順で配分が少ない、という予測です。

 

 この思考実験からは、2つの大学医学部新設であれば、関東に2つ、もしくは関東、近畿に1つずつ、という線が妥当な配分のように思えます。東北は増やすと過剰になる可能性があります。

 

 空想にお付き合いいただき、ありがとうございます。

 

 Copyright © 2003, 2007-2021 地域医療ジャーナル